2023/05/28 13:57
ケイト・ブランシェット主演の最新映画『TAR/ター』を観ました。
世界最高峰のオーケストラの一つ、ベルリン・フィルの首席指揮者に任命されたリディア・ター(ケイト・ブランシェット)は、その才能と努力でキャリアの頂点を築くも、教え子の一人が自殺したことを機に、ターの権力を利用した性的ハラスメントが暴かれ、人生が崩壊していく……。
という内容には違いないのですが、セリフが物語の解説になっている作品も多い昨今、この作品は、説明的要素がなさすぎ…!
おかげで、現実と幻想が入り混じる映像の、どれが現実でどれが幻想なのかさっぱり分からず、混乱しまくり。
物語の展開も、前半は、ターの指揮者哲学がひたすら語られるシーンが大半を占め、しかも難しい言葉を多用(それもターのキャラを表している一つの要素ではありますが)。
しかし、ターの性的ハラスメントが明るみに出る後半は、打って変わって場面が急展開し、前半と後半の展開スピードの落差が激しすぎ。
全てはトッド・フィールド監督が意図してやっていることに違いないにせよ、このクセの強い演出についていけた観客はどれほどいるのか?
とにかく私は分からなすぎて、家に帰ってネットでネタバレ解説を読んでやっと、なるほどとそれなりに理解した次第です。
とはいえ、分からないなりにも感じたのは、主人公ターは決して共感できるキャラではなく、自信満々で高圧的な権力者なのですが、そういうタイプの人は、地に落ちてもしぶとく生き残る生命力の強さを持っているということ。
もう這い上がってこないでほしいと思う人物ほど、這い上がる精神力をもっていて、それでも改心していればいいけれど、そうではなく這い上がってくる怖さを秘めているで厄介です。
ところで、キャストにマーク・ストロングの名前があり、聞き覚えのある名前と思ったら、コリン・モーガンの最新作『Dead Shot』で憎たらしい上司役を演っている俳優でした。
『ター』では全く別人で、名前を見て後から気が付きましたが、どちらの作品も強い存在感で場面を持っていく力のある名脇役です。
もちろん、主演のケイト・ブランシェットは熱演中の熱演で、これを最後に俳優業を引退するといった記事もチラッと目にしましたが、あそこまで役に入り込むと、体力・気力ともに凄まじい消耗があるのだろうと想像します。
そうだったんですね。それ聞いてちょっと安心しました。
>>字幕を追いすぎてスクリーン全体に目が行っていない
私もこの作品でいうと、特に前半部分の指揮者哲学を語りまくっているところは字幕も量が多くて読むだけで精一杯、って感じでした…
字幕は字数制限があるから、あれでも端折ってるセリフがあるんでしょうけど。。