2023/04/08 21:32
黒澤明監督の映画『生きる』を、カズオ・イシグロ脚本、ビル・ナイ主演でリメイクした『生きる Living』を観ました。
第二次世界大戦後のイギリスを舞台に、地味に生きてきたしがない公務員の主人公ウィリアムズが癌で余命半年と医者から宣告されたことで、変わっていくウィリアムズの人生感と残りの人生について描いた作品。
カズオ・イシグロいわく、この役は初めからビル・ナイを想定して書いたそうで、ビル・ナイはウィリアムズが僅かに残された人生を悔いなく生きるべく変わっていく様を、淡々と、でも、時に熱く、時にユーモラスに、絶妙なテンションで演じています。
中でも、元部下の若い女子マーガレット(エイミー・ルー・ウッド)に心惹かれ、とはいえ、決してそっち(恋愛)ではなく、彼女のバイタリティ溢れる生きざまに感化され、彼女と交流を持ちたくて映画に誘ったり、職場までわざわざ会いに行ったりするくだりは、ビル・ナイだからこそ微笑ましく見られるわけで、ビル・ナイでなければ、たとえ恋愛感情がなくても微妙にストーカーが入ったキモいオヤジでしかありません。
カズオ・イシグロの期待に応えまくりのビル・ナイの演技がとにかく素晴らしいこの作品、主人公ウィリアムズの人生を必要以上に美化せず、押しつけがましくない演出もニクイです。
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私も黒澤作品は「生きる」はもとより、いまだにちゃんと観たことないんです…汗
>>スッとした静かなたたずまいと時折遠慮がちに微笑むウィリアムズ氏がビル・ナイご本人かと思ってしまいそう
ですよね~
自分が想像する素のビル・ナイのイメージそのもので。
カズオ・イシグロのインタビューで、この役が笠智衆だったら…と想像していたら、そうだ、イギリスには笠智衆(ビル・ナイ)がいるではないか、といったコメントをされていました。
私もオリジナルを観てみようかと思ったんですが、オリジナルを観た人の感想で「説教臭い」といったコメントがあり、興味が薄れてしまって…
オリジナルにも「ストーカーのキモいオヤジ」シーンがあるんですね(笑)。
>>カズオ・イシグロ氏の納得できる言葉選びとそれに応えたビル・ナイの演技の賜物
脚本と俳優が良い作品にハズレはないですね!